たとえば、トラックの運転手が多く来店するセブン-イレブンの店舗があったとする。このような店舗では、夏になって暑くなると、白いシャツが着替え用に売れるのだという。セブン-イレブンの店舗では、このエピソードのような「どこで、何が、いつ売れるか」の仮説を、過去の販売実績や気象データなどと突き合わせて検証したうえで発注を行う。こうした取り組みが、予測精度の高い発注を実現し、売り逃しのロスを抑える。
あらゆる不確実性に対応できるか
とはいえ、消費者の心理や行動は絶えることなく変化していく。セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文氏は、過去の成功体験に縛られることを「成功の復讐」と呼び、これを避けるように説く(『売る力』文春新書)。そしてそのために、セブン-イレブンでは、機を逃さず新たな仮説-検証を次々と行うべく、複線的な仕組みが導入されている。以上のセブン-イレブンのアプローチはプラグマティック(実践主義)なものであり、普遍的な再現性というよりは、その場そのときの市場の秩序を見定めようとするものであるが、科学の方法と多くを共有する組み立てとなっている。