東京電力や関西電力など大手電力各社が、マンション全体で一括して電気を購入する「一括受電サービス」に相次ぎ乗り出している。原発停止に伴い電気料金が値上がりし、料金の安い一括受電への乗り換え需要が拡大しているためだ。平成28年の電力小売りの全面自由化を控え、同サービスで先行する新電力(新規事業者)も含め競争がさらに激化しそうだ。
「顧客を奪われるのを黙ってみているわけにはいかない」。大手電力の幹部は一括受電を強化する背景をこう説明する。これまで大手電力は収入の減少につながる恐れがあるため、一括受電サービスに慎重だった。だが、新電力が一括受電を武器に大手電力の顧客を切り崩し始め、状況が一変した。
一括受電は、各世帯が東電や関電など地域の電力会社と契約を結ぶのではなく、マンションの管理組合などがエレベーターや共用部の照明などと全戸の電気を一括して契約する。既に自由化され、家庭向けよりも安い大口料金の適用を受けられるため、電気代が安くなる仕組みだ。
東電は昨年3月に子会社を通じ新築マンション向けの一括受電サービスを始めた。8月には既設マンション向けにもサービスを拡大。共用部の電気料金を20~40%程度削減できるという。東電は「28年度までに4万戸に供給し、売り上げを3年後に約7億円にする」(幹部)とサービス拡大に意欲的だ。