社内や販売店には、「軽では利益を上げられない」とあきらめムードすら漂っていた。
だが、長引く景気低迷で、維持費が安く燃費もいい軽の存在感は高まる一方。円高で輸出採算も悪化し、軽で稼げる体質に転換しなければ、いずれ国内工場を維持できなくなることは明らかだった。
その危機感から生まれたのが、ホンダ初の軽「N360」から「N」の名を引き継いだ「Nシリーズ」の開発プロジェクト。研究開発・生産コストなどを抜本的に見直し、「国内で生産してももうけが出る軽」を目指した。
第1弾となる「N BOX」は「軽最大級の室内空間」を開発コンセプトに置いた。軽のメーンユーザーである女性から話を聞いたところ、軽にも室内空間の広さを求める声が多かったからだ。
このため、通常の開発プロセスとは違い、まず「室内空間」の確保を目標に定めたうえで、それを実現するためにエンジンの開発やガソリンタンクなどの配置を決めていった。