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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】「生きた伝説」に切り刻まれます Cinema塾

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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】「生きた伝説」に切り刻まれます Cinema塾

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(C)2011「エンディングノート」製作委員会  原一男監督が開講

 原一男監督(69)。世界中の映画大学で日本のドキュメンタリーをひもとくとき、必ず取り上げられる“生きた伝説”的存在だ。「極私的エロス 恋歌1974」(1974年)、「ゆきゆきて、神軍」(87年)、「全身小説家」(94年)ほか、その強烈な作品群は海外でも高く評価され、観客たちの度肝を抜いた。

 そんな原監督が、年齢70歳を目前に「new『Cinema塾』」を開講した。来年の春まで毎月1回の土曜日、さまざまなドキュメンタリー監督とその作品を共に鑑賞し、語り合うという講座である。とにかくエネルギッシュな企画で発信者の熱量そのままに午後0時30分から夜の8時までノンストップで行われる。河瀬直美監督(45)や松江哲明(てつあき)監督(37)らの人気監督や海外からのゲストも招き、「私とは何か」を掘り下げる「セルフドキュメンタリー」について探る。

 私と砂田麻美監督の作品で

 あす6月28日に開催される6月講座のテーマは「父との対話」。自身の父親を主人公にした作品を発表したファザコン娘な監督たち(砂田麻美監督、失礼!)がゲストである。砂田監督「エンディングノート」(2011年)と、私、ヤン・ヨンヒ「ディア・ピョンヤン」(05年)が“まな板の鯉”となり、進行役の原監督に切り刻まれる。細かく、しつこく、まるで検察の取り調べのようだといわれる原監督の質問に私と砂田監督の女2人がどう切り返すか、楽しみである。

 「エンディングノート」は、高度経済成長を駆け抜けたサラリーマンの父親を、娘である砂田監督が追った作品。公開当時はテレビをはじめ多くのメディアで紹介され日本のドキュメンタリーとしては異例の大ヒット、1億円を超える興行収入を記録した。「段取り命!」の父がある日突然がんを宣告される。エンディングノートを遺(のこ)す父と家族に訪れる最後の日々を娘がカメラで追う。

 「ディア・ピョンヤン」は、韓国・済州島出身でありながら思想的に北朝鮮を「祖国」として選び、朝鮮総連の幹部として生きた父親が主人公。大阪で暮らす両親とピョンヤンで暮らす兄たちを、娘であり妹である監督=私が10年間カメラで追った作品。本作の発表後、私は「北朝鮮入国禁止」を言い渡された。家族に会えなくとも映画を作り続ける決心を固めるキッカケにもなった作品である。

 何語る? 今からドキドキ

 自身の家族にカメラを向け、「素」の表情や言葉を切り取り、その映像を世間にさらすという暴力的な行為を行った私たち。娘としての躊躇(ちゅうちょ)を乗り越え、制作者として家族の心の中をのぞき込もうと葛藤した時間を振り返りながら、何を語るのだろうかと私自身、今からドキドキしている。

 28日のプログラムは、午後0時30分から上映される「ディア・ピョンヤン」を鑑賞後に原監督とヤンのトーク、午後2時55分上映の「エンディングノート」鑑賞後に原監督と砂田監督のトーク、午後5時から原監督、砂田監督、ヤンの3人でトーク、午後6時45分からは質問コーナー。途中入場や退場も自由。原監督は「最近、何かにどっぷり漬かるってことが無さ過ぎる。だまされたと思って参加してほしい、絶対に得られるモノがあるはず!」と語っている。午前11時50分開場、東京・水道橋のアテネ・フランセにて。(映画監督 ヤン・ヨンヒ/SANKEI EXPRESS

 ■ヤン・ヨンヒ(梁英姫) 1964年、大阪市生まれ。在日コリアン2世。映画監督。最新作「かぞくのくに」は第62回ベルリン国際映画祭で国際アートシアター連盟賞を受賞。他に監督作「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」がある。

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