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女性は笑って乗り越える力がある 石田えり、松田美由紀 舞台「フローズン・ビーチ」

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女性は笑って乗り越える力がある 石田えり、松田美由紀 舞台「フローズン・ビーチ」

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 本質が描かれている

 毒に満ちた女性の実態を、コメディータッチで描いたケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の傑作戯曲「フローズン・ビーチ」(高羽彩演出)が3月10日から、CBGKシブゲキ!!(東京)で上演される。

 女5人の群像の中心となる千津と市子を演じるのが、松田美由紀と石田えり。「女性は怖い。でも、いろんなことを笑って乗り越える力があると伝える作品」(松田)、「登場人物が抱く嫉妬や殺意は誰の胸にもあるもの。自分のなかに潜む毒を丸ごと受け止める機会にしてもらえたら」(石田)。女の本質にせまる戯曲のメッセージを読み解きながら、2人は演じる。

 大学最後の夏、南の孤島のモダンな別荘に、千津(松田)は、旧友の市子(石田)を伴いやってくる。別荘の主の双子、愛と萌(渡辺真起子が二役)と盲目の継母(山口美也子)もまじえ、女5人の人間関係は、居間を舞台に次第に煮詰まっていく。ささいな意思疎通の齟齬(そご)や誤解の連鎖は、やがて殺意にまで発展する。

 一見、飛躍かに見える展開だが、女性たちの日常に起こる感情のさざ波を丹念に拾い集めたKERAの戯曲は、むしろリアル。「何げないひと言を聞き流せず、ひっかかってしまうような狭い日常を生きる女性の本質が描かれている」と松田はいう。

 好きに生きましょうよ

 積み重なった怒りや嫉妬心は、やがて心で蓋をしておけなくなり、腐臭を放ちはじめる。劇中、登場人物に小さな虫がたかる場面がある。もめたり泣いたりする女たちを俯瞰で見つめる小さな虫。松田は「あなたのついた小さな嘘や、負の感情は、周囲に見透かされてますよ、というのを象徴しているんじゃないか」。

 「うん、うん、そうね」と石田も応じ、「ねたみや優越感、うじうじしたものから目をそらさずに、ちゃんと乗り越えないと、次の幸せは得られないし、そうしたほうがすがすがしいよ、って言われているような気持ちになった」という。

 バブル期、オウム事件や阪神大震災があった1995年、バブル崩壊後の「失われた10年」と、3つの時代を女たちは生き抜く。会話には時代性を感じさせるユーモアが散りばめられ、随所に笑える場面がある。「どんな悲惨なことが起こっても、結局、笑って次へ進んでいくのが女性なのかもしれませんね」(松田)

 背筋が寒くなる場面もあるが、登場人物はみな愚かゆえに愛らしく、たくましい。「起こることの大半は、意味がない。人間、生きていれば何でもあり! だから好きに生きましょうよ」(石田)と、さばさば笑い飛ばして楽しめる舞台だ。(津川綾子/SANKEI EXPRESS

 ■いしだ・えり 1960年、熊本県生まれ。78年、映画「翼は心につけて」でデビュー。「釣りバカ日誌」シリーズ(88~94年)のほか、映画やテレビで話題作に多数出演。舞台は82年「ドリームガール」(福田陽一郎演出)ほか、「おもいのまま」(飴屋法水演出)、「ロマンサー」(作・演出、蓬莱竜太)など。

 ■まつだ・みゆき 東京都出身。79年に「金田一耕助の冒険」で映画デビュー。初舞台は2005年「ドレッサー」(鈴木勝秀演出)。今夏に映画「2つ目の窓」(河瀬直美監督)が公開予定。

 【ガイド】

 3月8日 津山文化センター(岡山)。3月10~19日 CBGKシブゲキ!!(東京)。問い合わせは、オフィス・REN(電)03・5829・8031

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