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生き残ったものがすべき仕事がある 舞台「想い出のカルテット~もう一度唄わせて~」 黒柳徹子さんインタビュー
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自宅に帰るとすぐ就寝するという。「成長ホルモンが分泌される」時間帯に睡眠をとり、午前2時ごろに起床という生活リズムを明かした黒柳徹子さん(提供写真) 「進んでやりたいって思える好きなことをずっとやっているからですね。やだなあ、って思いながらやってても、人間は元気が出ないですよ」
いつもはつらつとしている秘訣を聞くと、黒柳徹子はこう返してきた。
今ではトーク番組「徹子の部屋」司会者としての印象が強いが、黒柳は文学座研究所や米ニューヨークの演劇スタジオでも学んだ女優。1989年から年1本程度のペースで続ける舞台「海外コメディ・シリーズ」は、「喜劇が好き」という黒柳のライフワークの一つだ。シリーズ25周年となる今年は、3月8日からEXシアター六本木(東京)で上演する、英劇作家ロナルド・ハーウッドの傑作戯曲「想い出のカルテット~もう一度唄わせて~」で舞台に立つ。
黒柳が演じるのは、「人の迷惑を考えないし、集団生活にも不慣れ。上から目線でものを言うけれど、悪い人じゃない、かわいい人」と、往年の大スターを絵に描いたようなオペラ歌手、ジーンだ。
引退後の音楽家が集まる老人ホームに入居したジーン。そこには、かつてベルディの傑作オペラ「リゴレット」の四重唱を一緒に歌った仲間3人がいた。
喝采を浴びた栄光の過去から一転、今や足腰は弱り、慈善団体に頼る暮らしぶり。認知症、孤独、老いへの不安…他の3人も似たりよったりの悩みを抱える。しかし4人は次第にありのままを受け入れ、でこぼことした下り坂のような老後を、ゆっくりと歩みだす。その姿を、黒柳をはじめ、鶴田忍、団時朗、阿知波悟美の大御所4人が豊かに演じる。
「(老いを感じて)はじめのうちはちょっと諦めちゃうこともあるだろうけれど、いろんなことを考えてみて、老後を楽しく生きるための“何か”をうまく見つけることが大切ですよ。そうじゃないと人間だめになっちゃうって本当に思います」
黒柳が、その“何か”の一つとして意識するのが、「長く生きた人間は、『あんなふうに生きている人がいるなら、自分もそうしてみよう』と、人に思ってもらえるような生き方を示すこと」。自分のことだけ考えてちゃだめですよ、とも付け加えた。
実は、黒柳自身も、昨年(2013年)11月に来日してライブ公演をした、黒柳より年下のポール・マッカートニー(71)の姿に触発されたという。
「昔はビートルズの4人だったけれど、今はたった1人で3時間の舞台に立ち、一度もお水を飲まず、一度もトイレに行かず、一度も休憩を入れず、一度もイスに座らず歌い続けたんですよ。おまけに明るくて、元気で、若々しくて、前よりもっと優しくて、ハンサムでかっこいい。生き残ったもののすべき仕事っていうのは、こういう姿を見せることなんだな、って思ったんです」
もちろん黒柳も、舞台に立ち続ける姿や、ユニセフ親善大使としての行動や発言で人々を刺激し、華やかで個性的なファッションでも見る人を楽しませてきた。取材当日は、イギリスの古道具屋で見つけたという、細部の装飾を凝らしたかわいい帽子風の髪飾りに、ファーのコートという装い。「私はやっぱり個性的な格好をするのが好きなんだと思います。それに昔、沢村貞子さんから“包み紙”はいつも新しくね、って言われていましたから」
生き残ったもののすべきこと。これは黒柳の活動のキーワードの一つのようだ。1月、本作の初演(2011年)をはじめ、シリーズの13演目17公演で演出をつとめた高橋昌也氏が亡くなった。60年来の付き合い。「私の理解者でした」という。
「お亡くなりになるちょっと前に、電話でお話ししたんです。『この物語のクライマックスの演出は、われながらうまくいっている、だからもう一回見たいんだ』っておっしゃっていました。高橋さんがもう一回見たいんだったら、やってあげましょう、って。きっと皆さんも楽しんでいただけると思いますよ」(津川綾子/SANKEI EXPRESS)
3月8~23日 EXシアター六本木(東京)。パルコ(電)03・3477・5858。4月3~6日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)。劇場(電)06・6377・3888