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ごった煮の世界観で人生さらに面白く 文学座「シェイクスピア祭」開催中

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ごった煮の世界観で人生さらに面白く 文学座「シェイクスピア祭」開催中

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「シェイクスピアは人間を楽観的に描いているのも魅力」と話す演出家の鵜山仁(うやま・ひとし)さん(津川綾子撮影)  今年は近世イギリスの劇作家、シェークスピアの生誕450年にあたる。これにあわせ、文学座が今月(2月)から、「シェイクスピア祭」と銘打ち、本公演2本と、関連作を含む19作のリーディング、シンポジウムなどを来年1月まで開催する。なぜ今なお、シェークスピア劇は、世界中の舞台で生き続けているのか。イベントを中心となり企画した文学座の演出家、鵜山仁(うやま・ひとし、60)に聞いた。

 一面的には描かない

 「決して、一つの価値観におさまらない。(シェークスピア戯曲の翻訳者)小田島雄志さんの言葉を借りれば、いろんな価値観や視点が“ごった煮”になっているのが魅力でしょう」とシェークスピア劇“長寿の秘訣”を鵜山は語る。

 ではどういった点で、ごった煮なのか。「喜劇、恋愛三昧、殺し合いなど一つの筋の中に見せ場が豊富。一見、せりふの字面は難しいが、筋立ては誰にでも伝わるものになっている。しかし、物語を生きる人物はシンプルではない」というのが、まず挙げられるという。

 例えば、文学座が3月4日まであうるすぽっと(東京)で上演している、中期の喜劇2作のうち、鵜山演出の「尺には尺を」の登場人物、公爵代理アンジェロの場合。堅物で知られる彼は、厳格に法を適用し、婚前に女性を妊娠させた男に死刑を申し渡す一方で、兄の命乞いに来た男の妹には「処女を私に捧げれば兄を許そう」と持ちかける。登場人物一人とっても、「こんな人」だと一面的には描かれず、どことなくいびつで面白い。他の登場人物も、個性や考え方が多様で、やはりごった煮だ。

 違う価値観の共存

 「一つのドグマ(教義)で人生を割り切るのは面白くない、スタンダードが一つではない、というのがシェークスピアの物語。どんなものでもそうですが、多様性のない一面的なものって、弱く、滅びやすいですよね。多様な価値観が共存していることは強さになるというのは、私たちが生きる社会にも言えることではないでしょうか」

 「シェイクスピア祭」では、来年1月上演の「リア王」(鵜山仁演出、江守徹主演)まで24演目に連続して触れ合える。

 「お祭りは、コミュニケーションの範囲を広げ、価値観や考え方をリセットする、ダイナミックな変化の機会。シェークスピアのごった煮世界に出合い、人生をさらに面白くしませんか」(津川綾子/SANKEI EXPRESS (動画))

 【ガイド】

 3月4日まで、あうるすぽっと(東京)で、「尺には尺を」と、「お気に召すまま」(高瀬久男演出)のシェークスピア中期の喜劇2本を上演。文学座(電)03・3351・7265。文学座の「シェイクスピア祭」の詳細は、www.bungakuza.com/shakespeare2014

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