SankeiBiz for mobile

国境が阻む悲恋 国連も介入 アラビアの「ロミオとジュリエット」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

国境が阻む悲恋 国連も介入 アラビアの「ロミオとジュリエット」

更新

イエメン・首都サヌア  ≪サウジ女性、イエメンに駆け落ち…強制送還危機≫

 家族に結婚を反対されたサウジアラビア人女性が、恋人であるイエメン人男性とともにイエメンに駆け落ちした結果、不法入国の疑いで拘束され、強制送還の危機に直面している。女性は11月24日、イエメンの裁判所に出廷し、男性との結婚と滞在許可を認めるよう直訴した。強制送還されれば、家族や親族から暴力を振るわれたり、生命を脅かされる恐れもあるといい、国連機関や国際人権団体は女性を難民として認定するようイエメンに働きかける「人道」介入を始めた。

 フランス通信(AFP)や英BBC放送(電子版)などよると、女性はフダ・ニランさん(22)、男性はアラファト・ムハンマド・タハルさん(25)。ニランさんが出稼ぎ労働者としてサウジの携帯電話販売店で働いていたタハルさんと出会い、恋に落ちた。

 しかし2人の交際や結婚は周囲から猛反発を受けた。石油大国のサウジは中東屈指の豊かさを誇る。一方、サウジ南部に隣接するイエメンはアラビア半島の最貧国で知られ、多くの人々がサウジへの出稼ぎで何とか生計を立てている。

 不法入国で拘束

 さらに、封建的な王政を敷くサウジに対し、イエメンは共和制国家。両国民には価値観の隔たりが大きく、サウジの多くの人々はイエメンを格下国家と蔑(さげす)んでいる。

 レバノン紙によると、ニランさんの家族が「イエメン人はサウジの女性と結婚する価値はない」と結婚に反対。2人は駆け落ちを決意し、10月に越境した。しかし、ニランさんは不法入国者として国境付近でイエメン当局に拘束され、タハルさんも幇助(ほうじょ)容疑で捕らえられた。

 国の法律がイスラム教の聖典「コーラン」の教えと同じというサウジでは女性の行動が厳しく制限されており、身内の男性が許可しなければ仕事も銀行口座の開設もできない。旅行や公道での運転も禁じられている。

 こうした格差や慣習の違いを乗り越えたニランさんの勇気ある行動に、多くのイエメン人たちが感動。彼女が出廷したイエメンの首都サヌアにある裁判所前では「私たちは皆、ニラン(と同じ境遇)だ」と書かれた鉢巻を巻いた数百人の支持者がデモ行進を行った。

 家族から暴力も

 ニランさんは現在勾留中で、有罪になれば強制送還となる。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は「ニランさんは、サウジに帰国すれば暴力的な家族から身体的危害を受ける」との声明を発表し、イエメンに強制送還しないようアピールした。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広報担当者は、強制送還を回避するため、ニランさんがイエメンに難民申請を行ったと説明。ロイター通信に「イエメンが申請を拒否すれば、他の受け入れ国を探す」と明言した。

 出身国の経済格差や厳しい生活慣習を乗り越えて愛を貫こうとする2人は、英国の劇作家、ウィリアム・シェークスピア(1564~1616年)が描いた悲恋になぞらえ、アラビアの「ロミオとジュリエット」として注目されている。(SANKEI EXPRESS

ランキング