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【ブラジルW杯】あす開幕 「世界を驚かす」ザックの野望

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【ブラジルW杯】あす開幕 「世界を驚かす」ザックの野望

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スタンドの大声援に手を振って応える本田圭佑(けいすけ)。これほどの上機嫌をみせるのは珍しい。隣は内田篤人=2014年6月8日、ブラジル・サンパウロ州ソロカーバ(山田喜貴撮影)  ワールドカップ(W杯)が開幕する。しかも世界で一番サッカーが大好きな国、ブラジルでだ。大会開催に抗議するデモが各地で行われているが、断言しよう。試合が始まれば、どの国で行われたW杯よりも盛り上がることになる。ただし、ブラジル代表の成績次第では、大混乱を呼ぶ可能性もある。

 1950年ブラジル大会決勝リーグ。マラカナン・スタジアムで行われたウルグアイとの第3戦でブラジル代表はまさかの逆転負けを喫し、優勝を逃した。満員のスタンドは沈黙し、2人がショック死し、2人が自殺した。気を失って運ばれる人多数。もし今大会でも、例えば決勝のマラカナンで隣国アルゼンチンに敗れるようなことがあれば、どんな騒動になるか想像するのも恐ろしい。

 南米のサッカー2大国だけではない。好選手をそろえたコロンビアやウルグアイにも優勝のチャンスはあり、連覇を狙うスペインやドイツ、イタリア、オランダなどの欧州勢も栄冠を狙う。

 そして日本も、野望の有資格者である。本田圭佑(けいすけ、27)や長友佑都(ゆうと、27)ははっきりと「優勝」を口にし、監督のアルベルト・ザッケローニ(61)も「世界を驚かせる」と話している。

 イタリア人のザッケローニは度重なる病気やけがで20歳前に現役選手を引退した。若くして指導者としての研鑽(けんさん)を積み、下部チームの指揮からのし上がり、セリエAのビッグ3、ACミラン、インテル、ユベントスの監督を歴任した。そのザックも代表監督は日本が初めて。もちろんW杯も初めて。欧州に再び自らの名をとどろかす絶好機となる。

 日本は98年フランス大会から数えて5大会連続出場。岡田武史はフランス大会では井原正巳をスイーパーに置き、南アフリカ大会では阿部勇樹をアンカーとしてボランチの後ろに配置してW杯直前に守備的布陣を選択した。日韓大会のフィリップ・トルシエは自分こそ王であるといわんばかりに試合ごとに布陣を変え、チームを混乱させた。ドイツ大会のジーコは選手を信頼する余りに混乱を収拾する術を持たなかった。

 初の経験豊富な外国人監督としてW杯での日本を指揮するザックは、列強を攻め抜いて結果を得ようとしている。そのための準備に自信も持っている。誰よりも日本人が、その実現を驚きたい。

 ≪今まで通り組織的に攻め、守る≫

 日伯移民の歴史や親日国としてのブラジルの存在を知ってはいても、さすがに日本代表選手たちも驚いたのではないか。

 開幕を間近に控えたワールドカップ(W杯)ブラジル大会のためベースキャンプ地のイトゥ入りした日本代表は近郊のソロカバで公開練習を行い、なんと在留邦人や日系人ら約5400人のファンに迎えられた。

 外国で、これほどの熱烈な歓迎を受けたことはないだろう。ミニゲームでゴールが決まるたびに「ニッポン」コールが起き、一番人気「ホンダ」コールには本田自身が珍しく手を挙げて応えた。本田ら選手は子供や女性のファンの求めに応じて笑顔で記念写真に納まり、一人一人丁寧にサインをしていた。

 直前の親善試合では逆転勝ちを続けながら、先取点を奪われる守備網の乱れに硬い表情の首脳陣、選手たちだったが、異国での大歓迎にはさすがに表情が緩んだようだ。

 これがいいリラックス効果を生んでくれればいい。

 選手らに迷いはないようだ。2点取られれば3点を取り返す。攻められてずるずると引くようなサッカーはしない。組織的に守り、組織的に攻める。流動的にパスを回し、ボールを保持し、試合を支配し続ける。勝つだけではなく、世界を驚かせてやる。誰もが、そんな決意を口にする。

 W杯は、そんなに甘いものではない。日本だけではなく、全出場国が死にものぐるいで勝ちに執着する。堅守速攻のチームにとって、日本代表の戦術は格好の餌食となるかもしれない。

 それでも、これまで通りにやってみる。やらなくては日本のサッカーに明日はない。監督以下のそんな決意の行方を楽しみにしたい。勝敗だけではなく、サッカーを見たい。もちろん、勝ってもほしいのだが。

 初戦のコートジボワール戦は日本時間6月15日午前。世界有数の攻撃的タレントをずらりとそろえたこのアフリカの雄は、とんでもなく強い。2戦目のギリシャの守備は、とんでもなく堅い。3戦目のコロンビアは優勝候補の一角だ。それでも日本が勝ち抜いて、決勝のマラカナンで世界を驚かせることを夢見る。(EX編集部/撮影:山田喜貴、AP、ロイター/SANKEI EXPRESS

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