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企業に「紋切り型」コメント改善促す 東証 投資家重視へ新制度

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企業に「紋切り型」コメント改善促す 東証 投資家重視へ新制度

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報道に対する企業の情報開示例(2013年4月~2014年3月)=2014年5月27日現在  東京証券取引所は、5月31日からM&A(企業の合併・買収)など株価に影響を与えるメディアの報道について、投資家に注意を喚起する新制度を始める。報道された上場企業は内容の真偽に関するコメントを発表するが、「決定した事実はない」「当社が公表したものではない」など紋切り型のコメントが目立ち、投資家を惑わせるケースも少なくなかった。新制度を活用し、投資家の判断材料となる情報開示を企業に強く求めていく方針だ。

 注意喚起制度はM&Aや増資、不祥事などが報道された場合、対象企業に「不明確な情報が生じている」ことを東証のホームページや報道機関、証券会社を通じて告知する仕組み。株式市場の取引開始前や直後に判断材料になり得るコメントが開示された場合は「不明確ではなくなった」として注意喚起は見送る。一方、「開示内容が不十分であれば再び注意を喚起する場合もある」(東証)という。このため、企業コメントの改善につながると期待されている。

 東証はすでに昨夏から報道について、企業にコメントの開示を要請した上で、投資家が報道の真偽を判断しやすい内容になるよう働きかけているという。

 この効果もあって、具体性のあるコメントが増えてきている。今月(5月)14日に経営統合が報道されたKADOKAWAとドワンゴは「本日開催の取締役会に付議する予定」と、報道が事実であることを示唆するコメントを発表した。

 最近、報道に対する情報開示の内容が注目されたのは、川崎重工業と三井造船の経営統合交渉に関する報道での“騒動”だ。昨年(2013年)4月、川崎重工は報道を否定するコメントを出しながら、約2カ月後に一転して交渉があったことを認めた。当時、日本取引所グループの斉藤惇最高経営責任者は「株主のことが頭から消えている」と批判した。

 もっとも、企業側にも踏み込んだコメントを出しにくいケースがあるのは事実。野村総合研究所の大崎貞和主席研究員は「肯定コメントを出した後に状況が変わったりすると、企業は法的なリスクを負う。また、M&Aでは開示が交渉の破談につながる可能性もある」と指摘する。

 投資家、企業の両者に最適な開示のあり方に完全な“解”はなく、関係者が声をそろえるのは「ケース・バイ・ケース」。制度開始後も東証と企業の試行錯誤は続きそうだ。

 ≪ロンドン銀、基準価格決定・公表 廃止の可能性≫

 世界の銀取引の中心地ロンドンで、市場の仕組みが大きく変わろうとしている。1897年から1世紀以上続いてきた基準価格の決定・公表が廃止される可能性が高まっており、代替案探しが急務だ。

 当局の規制強化が背景

 基準価格の廃止は、米英当局による規制の強化が背景。米商品先物取引委員会(CFTC)などは、限られた銀行が相談して価格を決める仕組みが不透明だと調査に踏み切った。

 基準価格は現在、欧米などの銀行3行が決めている。このうちドイツ銀行は今年4月、訴訟リスクを回避するため、決定メンバーから脱退を表明。3行は代わりとなる銀行を探したが見つからず、今後3カ月で基準価格の公表を取りやめると今月(5月)14日に発表した。

 銀の基準価格は3行の担当者が毎日、取引の実勢を踏まえて決め、公表する。宝飾品から工業用まで、さまざまな用途で使われる銀はこの価格に基づいて取引される。邦銀ロンドン支店の担当者は「基準価格のない取引は不可能で、市場は動揺している」と話す。

 英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロンドンでの銀の年間取引額は、年約1兆6000億ドル(約162兆円)に上る。同様の基準価格は取引額がより多い金にもあり、廃止の動きが波及すれば影響はさらに大きい。

 英金銀取引仲介会社ブリオンボールトのエイドリアン・アッシュ調査主任は「基準価格の廃止は取引量の減少をもたらし、価格上昇を招く恐れがある」と警告。現在の基準価格が終了する8月までに、新たな指標をつくることが欠かせないと訴える。(共同/SANKEI EXPRESS

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