SankeiBiz for mobile

【取材最前線】「夜間取引」解けないパズル

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

【取材最前線】「夜間取引」解けないパズル

更新

 東京証券取引所は、この複雑な“パズル”を解けるだろうか。導入を検討している「夜間取引」のことだ。

 株式の売買は現在、午前9~11時半と午後12時半~3時に行われている。スマートフォンなどで手軽に売買できるようになったとはいえ、日中働いているサラリーマンは取引をしにくい。夜間も市場を開ければ、参加者が増え、投資資金がもっと入ってくるという意見が背景にある。

 しかし、コトはそう簡単ではない。市場には「流動性」が重要だ。常に多くの注文が出ていて、売りたいときに売り、買いたいときに買うことができなければならない。一定の取引量がなければ、わずかな買いや売りで株価が大きく上げ下げすることになる。投資家が痛手を被る可能性が高くなるほか、一度に大量の注文を出すことで、株価を操縦する不正もやりやすくなる。

 一方で証券会社には、夜間に売買する顧客への対応が必要になる。ネット証券でもコールセンターの時間延長などが必要で、対面型証券会社はより大幅な人件費の増大を迫られる。このため、前回、夜間取引が議論された2010年には、大手証券などが猛反対した結果、導入は見送られ、昼休みを短縮して取引時間を延ばすだけに終わった。

 反対派には、「夜間取引が活発に行われている例はない」と、世界の主要市場の状況を指摘する声もある。ただ、これに対しては、東証を傘下に持つ日本取引所グループの斉藤惇(あつし)最高経営責任者(CEO)が「日本は極東に位置しており、特殊な事情がある。他市場のことは参考にならない」と反論。斉藤CEOは、日本の夜間が欧米市場の取引時間に当たり、東京市場の取引時間終了後に日本企業が発表した決算やM&A(合併・買収)などのニュースをもとに最初に売買できるのが、国内ではなく海外の投資家であることを問題視している。特に、米国で日本の大手企業のADR(株と同じように取引できる預託証券)が先に値動きし、それを引き継ぐかたちに翌朝、ようやく国内投資家が売買できるという状況を是正したいようだ。

 東証は有識者や市場関係者らからなる研究会を発足させ、その検討結果を踏まえて決めるが、すべての関係者を納得させる結論を導くことは難しく、決断が注目される。(高橋寛次/SANKEI EXPRESS

ランキング