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14年3月期決算ピーク 最終益2.1倍 今期「追い風」期待薄 問われる実力

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14年3月期決算ピーク 最終益2.1倍 今期「追い風」期待薄 問われる実力

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決算発表がピークを迎え、報道各社の棚に資料を配る各企業の担当者=2014年5月9日午後、東京都中央区日本橋兜町の東京証券取引所(早坂洋祐撮影)  東京証券取引所に上場する企業の2014年3月期決算発表が5月9日、ピークを迎えた。東証1部上場企業(金融を除く)の業績は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安株高などを追い風に、最終利益は2.1倍に膨らんだ。ただ、15年3月期は5.1%増と伸びが大幅に鈍化する見通し。今後大幅な円安が見込みづらいほか、4月からの消費税増税の影響も見極めにくく、各社とも先行きに慎重な姿勢をみせている。

 SMBC日興証券が8日までに業績を開示した458社(全体の37%)を集計した。

 14年3月期は売上高が12.6%増、経常利益は51.2%増だった。円安株高や景況感の改善の恩恵で、多くの企業の業績が上向いた。消費税増税前の駆け込み需要も寄与した。

 ただ、15年3月期の業績は一転して急ブレーキがかかる見通しだ。売上高は0.7%減とマイナスに転じるほか、経常利益は4.5%増、最終利益が5.1%増にとどまる。

 各業種の15年3月期の最終利益予想も慎重だ。輸送用機器が2.9%の減益を見込み、機械は7.2%の増益にとどまるとの予測だ。非製造業でも14年3月期に大幅増益だった卸売業が減益を予想している。

 SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「今後、大幅な円安は見込みづらく、業績を押し上げる効果は薄まる」と指摘。増税で消費が打撃を受ける可能性も否定できないため、控えめな予想につながったと分析している。

 ただ、15年3月期の連結最終利益を微増見通しとした丸紅の国分文也社長は、9日の決算発表で「相当上積みの余地を残している」と発言。トヨタ自動車が8日に発表した減益予想に対しても、アナリストから「慎重過ぎる」との声が出ており、上振れする可能性もありそうだ。

 東証によると9日は午後5時までに、1部、2部とマザーズ、ジャスダックに上場する3月期決算企業438社が業績を発表した。

 ≪今期「追い風」期待薄 問われる実力≫

 2015年3月期の連結業績予想で、増益率が大幅に鈍化する背景には、急激な円安株高の進行など、14年3月期のような“追い風”が期待しにくいことがある。想定為替レートの平均は1ドル=98円台と足元の水準との差が縮小しており、為替差益による業績の上方修正余地は限定的だ。企業が保有する上場株式の含み益を膨らませた株価の上昇も止まっている。今期は、戦略の巧拙など各社の実力が厳しく問われそうだ。

 5月9日、最終利益などが過去最高となった14年3月期業績を発表した三菱重工業の宮永俊一社長は「円高の緩和が効いた。ありがたかった」と振り返った。三菱重工業に限らず、多くの企業に好決算をもたらしたのは、円安株高など、経営環境の急激な改善だ。

 同じく最高益をたたき出したスズキの鈴木修会長は9日の決算発表会見で円安効果について「今期は期待できません」と語った。スズキはトヨタ自動車などと同じく、想定レートを1ドル=100円に設定した。

 SMBC日興証券が、東証1部上場企業で想定レートを公表している273社の平均を調べたところ、8日時点で1ドル=98円47銭。いずれも、足元の1ドル=101円台との差はわずか2~3円程度で、今後一段と円安が進まない限り、為替差益は享受できない。

 株価の低迷も気がかりだ。14年3月期は、保有する上場株式の株価上昇が多くの企業の利益を押し上げた。だが、勢いを失った現在の株価が15年3月末まで続けば、今期はこうした効果は望み薄だ。

 すでにデンソー、出光興産、三菱地所、武田薬品工業、オリエンタルランド、日本取引所グループなどは15年3月期の最終利益などで減益予想を出している。

 追い風がやむだけでなく、“逆風”の懸念も広がる。

 大和証券の守田誠ストラテジストは「中国や東南アジアの経済状況をみて、新興国の需要見通しを引き下げた」と話す。その一方で、国内では消費税増税の影響への不安が払拭されていない。

 SMBC日興証券の太田佳代子クオンツアナリストは、「14年3月期は企業全体の業績がよかったが、今期は優劣が出てくる。手元資金を有効に使い、売上高を伸ばす企業が勝ち残る」と指摘している。(高橋寛次/SANKEI EXPRESS

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