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働く人の出会いは奇跡の「縁」 「おい!山田」著者 安藤祐介さん

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働く人の出会いは奇跡の「縁」 「おい!山田」著者 安藤祐介さん

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自身も“勤め人”である著者の安藤祐介さん。「組織で働くからこその喜びもある」と話す=2014年3月8日、東京都文京区(塩塚夢撮影)  【本の話をしよう】

 一社員が、いきなり“ゆるキャラ”に-。製菓会社を舞台に、社員たちの悲喜こもごもを描いた『おい!山田』が刊行された。著者の安藤祐介さん(36)は、自身も公務員として働きながら執筆活動を続ける。「勤め人賛歌にしたい」との思いを込めて、“誰かと仕事をする喜び”を書き上げた。

 どんな人にも悩みはある

 準大手の製菓会社に勤める山田助(たすく)は、サラリーマン姿のまま、ゆるキャラとなり、新製品「ガリチョコバー」のPRをすることになる。同僚の水嶋里美がマネジメントを引き受けるが、前代未聞のゆるキャラ作戦には社内外から賛否両論が相次ぐ-。

 一社員がそのままゆるキャラになるという斬新なアイデア。「人間は誰しもキャラクターを演じているのでは、という思いがきっかけです」と話す。しかし、アイデア倒れには終わらせない。組織の中で働く苦しみや理不尽さ、そしてその先に待ち受ける喜びを丹念に描く。「今、どちらかというと組織に属して働くということが、マイナスにとらえられている。僕自身も組織に属する『勤め人』の一人ですが、組織で働くからこそ得られる喜びがあると思うんです。例えば、足りないものを補いあったりと、自分一人ではできないことができる」

 とはいえ、よい面ばかりではない。「メンツを重視しすぎたり、セクショナリズムに陥ってしまったり、部署同士でいがみあったり…力のベクトルをプラスに向かわせることができたら、2倍も3倍も組織のよさを生かせるんじゃないか、とも思います」

 穏やかで不思議と人に愛される山田に対し、がんばり屋で負けず嫌いでともすると人と衝突しがちの里美。物語は、そんな山田と里美の交互の視点から進められていく。「外から見たら『いい人』でも、実は心の中でもやもやしたものを抱えている。どんなスーパーマンでも悩みがある。そう思えば、ちょっとラクになれませんか?」

 そこでしか見えない所

 IT企業などさまざまな組織で働きながら、コンスタントに働く人をテーマにした作品を発表し続けてきた。「勤めて、書いて、勤めて、書いて…の繰り返し。でも、そこでしか見えない所があるんです。自分の作品は『お仕事小説』ではなく、『働く人小説』だと思っています。仕事の特殊性ではなく、働く人そのものが誰と出会い、何を見つけていくのか。そういうものを書いていきたい」

 大切にしているのは、「縁」という言葉。「『縁の力』を信じているんです。何十億もの人がいて、たまたま一緒の会社で、一緒のシマで働くって奇跡的な縁。それに毎年2、3人は異動するから、このチームで働けるのは、今この瞬間だけですよね。この人と組めるありがたみ。読み終わった翌日出社したら、職場の仲間との『縁』に感謝したくなる。そんなふうに思ってもらえたらうれしいですね」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■あんどう・ゆうすけ 1977年、福岡県出身。早稲田大学卒業。2007年、『被取締役新入社員』でTBS・講談社第1回ドラマ原作大賞を受賞。著書に『営業零課接待班』『社史編纂室 アフター5魔術団』など。

「おい!山田」(安藤祐介著/講談社、1470円)

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