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「がんばれよ」と声をかけるつもりで書いた 「猫が背筋を伸ばすとき」漫画家 杉作さん

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「がんばれよ」と声をかけるつもりで書いた 「猫が背筋を伸ばすとき」漫画家 杉作さん

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漫画家、杉作(すぎさく)さん。デビュー作も猫。「諦めようと思っていたときに、猫のおかげで漫画家になれた。猫には頭が上がりません」と笑う=2014年2月4日、東京都渋谷区(塩塚夢撮影)  【本の話をしよう】

 ベストセラー『猫なんかよんでもこない。』などの作品で知られる漫画家、杉作さん(47)が、新刊コミック『猫が背筋を伸ばすとき』を刊行した。愛らしいタッチで描かれる、小さな女の子と野良のボス猫の物語。読む者の心に深く染み入る、新たな“傑作ネコマンガ”の誕生だ。

 1年生になる少し前の春休み。両親の離婚によって、ほのかは見知らぬ街に引っ越してきた。寂しさと不安の中、親戚の初老の居酒屋店主「権じい」、野良の大ボス猫「ノブナガ」、けなげに身を寄せ合い生きる野良猫たちに見守られながら成長していく-。

 デビュー以来、猫が登場する作品を書き続けてきたが、小さな女の子が主人公になるのは初めて。「猫と女の子という組み合わせは自分にとっても新鮮。どんなふうになるか分からないからこそ楽しそうだな、と思って書き始めました」

 『猫なんか~』では、実際に飼っていた猫をモデルにしたが、今回は野良猫。「道の真ん中にドテッと野良猫が寝ていたりすると、安心します。でも、今は野良猫が生きにくい社会になってきている。厳しい環境の中でも、それでも生きている彼らへ、『がんばれよ』と声をかけるようなつもりで書いた作品です」

 幼いほのかと野良猫。「どちらも人間の大人が『何かしよう』と思ったら、抵抗できない立場。なんとなく通じ合う所がある。家族を持たない権じいもまた、社会からはみだした存在ともいえる。型にはまっていなくても、互いに少しずつ心の支えになりあうだけで、幸せになれる。野良猫が生きていける空気が、そういう幸せにつながっていくんじゃないかな」

 彼らから気づかされる

 作品の中で書かれる猫たちは、愛くるしいだけではない。特に大ボス・ノブナガの貫禄たるや、だ。子猫を助けたり、流しの猫と対決したり。任侠映画の親分のよう。「ボス猫の威厳ってすごい。昔、勝手にボス猫が部屋の中に入ってきたことがありました。うちの猫を家来のように従えて、『ここはオレのテリトリーだ』みたいに、タンスの上から見下ろしている。『乗っ取られる!』って思わず震えましたよ(笑)。でも、うちの猫が他の猫に襲われたときにはサッと助けにきたりして。猫社会を仕切っているわけです。不思議な生き物だなあ、としみじみ思いました」

 ベタつかない絶妙な猫との距離感。「もともと自分が犬好きだからかな。でも20代のとき、同居していた兄貴が猫を拾ってきて。暮らしてみると、意外に意思疎通もできたりして、面白い。それ以来、街を歩いていてもついつい猫に目がいくようになってしまいました」

 猫が教えてくれるものとは、何か。「人って頭で考えて好き放題にやっているけれど、猫は実にシンプルに生きている。猫には、こちらが『見抜かれている』と思ってしまうような、おそろしい瞬間がある(笑)。彼らの生き方から気づかされることが多いですね」(塩塚夢(ゆめ)、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■すぎさく 1966年、新潟県生まれ。プロボクサーを経て、99年『イモウトヨ』で青木雄二賞受賞、この作品でデビュー。プロボクサーの男と猫の暮らしを描いた『猫なんかよんでもこない。』は累計20万部突破のヒット作。その他の代表作に『クロ號』などがある。

「猫が背筋を伸ばすとき」(杉作_刊/幻冬舎、1155円)

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