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生き方編 「紙一重の人生」 ファッション理念

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生き方編 「紙一重の人生」 ファッション理念

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美容家、IKKO(いっこー)さんのバービー人形コレクションの一部。「私のファッションリーダー、バービーちゃん。美を助けてくれる大切な仲間なので、そのまま撮影するのではなく、キラキラのステージに立ってもらいました」  【美のカリスマ IKKOのちょっといい話 聞きたい?】

 この連載を読んでくださっているみなさんから、「衣装がステキですね」というメッセージをいただきました。ありがとうございます。私の衣装はほとんどが自前。「これぞ」と思ったものだけを選んでいます。私がファッションにこだわるのは、「紙一重の人生」を生きてきたから。今日はそれについてお話しさせてください。

 本物を極める決意

 私はもともと女性として生まれてきたわけではありません。女性は普通のお洋服を着てもそのままで自然だけれど、私の場合は、ほんのちょっとバランスを間違えるだけで、滑稽に映ってしまいます。だからこそ、私は最高級の衣装を選び、身にまとうようにしています。

 これは若い頃のある経験が原点になっています。20代の頃、服装はまだ女性のものではありませんでしたけれど、顔はメークをして美容室に出ていました。すると、周りから「お前のは場末のメークだ」と言われたのです。愕然(がくぜん)としましたが、そのとき私は決意しました。「最高級のものを知り尽くして、とにかく本物を極めていこう」と。ですので、私は着る物については、デザインはもちろん、素材から縫製、カットラインまでを知った上で、一流のものだけを選ぶようにしています。

 所作までおしゃれに

 ヘアメークアーティストとして現役だった30代の頃は、ヨージヤマモトやコムデギャルソンなどのブランドをよく着ていました。その頃は「女性になろう」と思っていたわけではなく(もちろん心は女性でしたけれど)、あくまで裏方として、「最高のプロ」を表現するための衣装でしたね。シンプルな白いシャツが私のトレードマークでした。

 「心だけでなく服装も女性として生きよう」と決めたのは、テレビに出始めるようになった40代。女性の美を極めようと、ファッションショーのモデルさんのたたずまいや着こなしを猛勉強しました。衣装だけでなく所作も美を表現する上で大事ですから。

 私が「本当におしゃれだなあ」と思うのは、カーディガンやコートを肩からサラリと羽織ってもさまになる人。サングラスも同じですが、所作まで含めておしゃれでないと、どうしても「かっこつけている」という印象になってしまうものです。

 お気に入りのブランドはたくさんありますけれど、グッチの新作は必ず見に行くようにしています。グッチは長く着ることができますし、「シンプルないい女」を演出してくれるところが大好きです。

 ユキトリイもたくさん持っています。ユキトリイのものは、エレガントだったりシャープだったりと、いろんなテイストのお洋服がありますが、どこかに必ずかわいらしさがひそんでいる。それが絶妙なスパイスになっています。

 洋服も着物も、審美眼をすごくもらえます。衣装を身にまとうということは、デザイナーの魂を受け取るということ。その存在感から、多くを学んでいます。

 粋で上品、違和感なく

 私が常に意識しているのは、次の3つの定義。どこまでが粋か下品か、野暮か上品か。女性の中に混じっても違和感がないか、それともヘンなおじさんになってしまうか。少しでもその境目を見誤ってはいけない「紙一重の人生」なのです。

 でも、どれだけ追い求めても、行き着くところはエンドレス。たどり着けただろうか、と思ったところに「老い」がやってくるからです。しかも、私の場合は男としての老い。極めたものが、あっという間に、泡のように消えていってしまう…。それでも…いいえ、だからこそ、私はずっとずっと、美を追い求めていくのです。

 愛を込めて IKKO(美容家 IKKO/撮影:フォトグラファー 宮崎貢司/SANKEI EXPRESS

 ■いっこー 女性誌をはじめ、テレビ・CM・舞台などのヘアメークを通じ、「女優メイクIKKO」を確立。その後、美容家・タレントとして活動。最近では、コスメをはじめ、多くの女性の美に対するプロデュース業にも注目が集まる。

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