ルセフ大統領が弾劾裁判で職務停止となり、逆風に追い打ちをかける。構想を推進してきた中道左派政権が退き、中道右派のテメル大統領代行に引き継がれた。強力な推進役はない。
深入りしすぎた中国
鉄道ではないが、香港企業が2014年末に着工した太平洋とカリブ海をつなぐニカラグア運河も停滞している。15年11月に16年末までの工事延期が発表され、CNNは「着工に至るのか専門家は疑いのまなざしを向ける」と伝えた。
中国が鉄道などの事業に取り組む背後には、パナマ運河を避け米国に影響されない輸送ルートを確保する思惑がある。また中南米諸国との関係強化は、アジアで対中包囲網を築く米国への牽制にもなってきた。
しかし昨年、キューバが54年ぶりに米国と国交を回復し、11月にはアルゼンチンで12年続いた反米左派政権が倒れた。中南米の政治的な風向きは変わった。経済悪化も加わり、中国はこれまでの深入りがアダとなる事態に直面している。
今年のインフレ率が700%を超すとも予測されるベネズエラとの関係は深刻だ。鉄道以外にも住宅建設など政治的な動機に基づく事業に多額の金をつぎ込んできたからだ。中国はいまや、融資焦げ付きを防ぐための融資をする状態に陥っているとの指摘もある。
両国関係に詳しいボストン大学のケビン・ギャラハー教授はAP通信に「内部崩壊するベネズエラ経済に中国の憂慮は募り、もはやパニック状態だ」と指摘している。