契約額は75億ドルで、中国が海外市場で得た当時最大の事業だった。ベネズエラにとっても石油以外の分野での最大事業で、南米初の車両製造工場建設や7500人の雇用創出、中国での技術研修など、両国の協力がアピールされた。中国メディアは「中国中鉄の海外進出は、歴史的な前進を実現した」と持ち上げた。
「経済崩壊」のシンボル
世界最大級の原油確認埋蔵量を誇り、反米左派のチャベス大統領が率いるベネズエラは当時、中国にとり理想の友好国だった。習近平政権が掲げる中華民族の偉大な復興「中国の夢」は、鉄道事業で地球の裏側にまで伸びる勢いだった。
工事が順調なら中国式の高速列車はすでに走っているはず。ところがその後、動向を伝える報道はほとんどなくなった。厳しい現実に遭遇していたのだ。
ベネズエラ内陸部の小都市サラサ。コンクリート製枕木を製造する工場は放棄され、天井や壁もない建物が無残な姿をさらす。昨年1月、最後の中国人マネジャーが去ると、現地では発電機やエアコン、鉄製の外壁や銅線など金目のものが持ち去られたのだ。