2つ目の「重み」は、中谷氏の言葉にもあるが、将来の戦闘機開発や航空機産業全体の技術革新に資する展望だ。
平成22年3月に国内企業群が試作を始めた心神は2月以降、9回の地上滑走実験を重ねた。そして迎えた今次初飛行は、防衛装備庁引渡し前の最終段階にして、最大の難関であった。
「失敗は成功のもと」
あと1回有視界飛行を試し、引き渡されても、研究中だった最新技術を追加→試験飛行を反復→問題点をあぶり出し→分析→改善を施し→対応技術を付加→再び飛行する。回転を止めず進化を求め続ける、以上の過程の繰り返しを軍事の要諦《スパイラル・セオリー》と呼ぶ。
実動・実戦で使う兵器の不具合は「自衛官の死」を意味する。従って、セオリー途中での不具合や問題点は貴重な発展的改善材料で、次の次の戦闘機開発にも性能アップした上で導入される。
実動・実戦で失敗をしなければそれでよく、兵器の分野ではまさに「失敗は成功のもと」なのだ。 加えて「学び取った技術・ノウハウは、許される範囲で最大限民間にも伝授できる」(三菱重工業の浜田充・技師長)。