企業の利益にかかる法人実効税率が現在の32.11%から4月に29.97%に下がる。先進国の中で高いとされた税率をドイツ並みの水準に引き下げ、企業が利益を設備投資や賃金に振り向けることを狙った。ただ、今年の春闘では自動車や電機など大半の企業でベースアップ(ベア)が前年実績を下回る結果となるなど、法人税減税で経済の好循環を回す政府のもくろみには不透明感が漂う。
法人実効税率は20%台到達の目標を当初方針より1年前倒しした。さらに2018年度には29.74%まで下げる。外形標準課税の拡大などで財源を確保して産業界全体の税負担は変えず、稼ぐ企業の成長を後押し。政府はその見返りに投資や賃上げを求め、経済成長につなげることを想定した。
だが、「経営環境の潮目が変わった」とトヨタ自動車の豊田章男社長は語る。企業は好業績だが、中国経済の減速で世界経済の先行きは不透明感を増し、事業環境の悪化が賃上げの足かせになりつつある。