12日の東京金融市場では、前日の欧米市場の流れを引き継いで大幅な円高と株安が進む展開となり、アジア市場でも大半の株価が下落するなど、世界的な株安連鎖の様相を呈した。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が大きく崩れたわけではないが、市場は悲観ムードに厚く覆われているため、「負の連鎖」に陥っている。
「悪材料にとても反応しやすくなっている」。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、市場を取り巻く雰囲気についてこう語る。
実際、悪材料には事欠かない。原油先物相場は11日に約12年9カ月ぶりの安値水準に落ち込み、中国経済の減速懸念もくすぶる。そして欧州では銀行の健全性への懸念が浮上した。海外発の悪材料が続出したことで市場心理は弱気に大きく傾いており、米国では投資家の不安心理を映し出すとされる「VIX指数」が同日、「中国ショック」時の昨年9月1日以来約5カ月半ぶりの水準に上昇した。投資家が、値下がりリスクのある株式を買うような動きには出にくい状況だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は10日の議会証言で、「景気回復が期待外れならば、利上げをより緩やかなペースにするのが適切」と述べた。もし利上げペースが減速するのなら、本来は株式相場にとって追い風となる発言だ。