実際、マイナス金利導入の一報が伝わると、円相場は対ドルで急落した。
一方、元の対円相場は1日まで4営業日続伸した。もともと米ドルに事実上ペッグ(固定)している元は、量的緩和終了に伴うドル高に応じて元高を余儀なくされ、ここ1、2年は割高とみなされていた。さらに、日銀のマイナス金利導入で円安・元高の流れが続くと、日本企業と競合する中国企業の価格競争力は弱まるとみられる。
みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「マイナス金利の対抗措置として、中国人民銀行(中央銀行)が元の大幅切り下げに踏み切る可能性は高まった」と分析する。
人民銀は昨夏、元相場を「市場の実勢に合わせる」として約2%切り下げたが、市場では元がなお割高とみる投機筋が元売りを加速。急ピッチの元安が海外への資本流出を招くなど「チャイナ・ショック」が広がった。
元レートを実勢程度まで大幅に切り下げれば、元売りは収束するとの声が上がる一方、中国経済の失速懸念がより強まり、金融市場の混乱に拍車が掛かるとの見方もある。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日中通貨切り下げ競争になれば、日銀は自らの首を絞めることになりかねない」と警告する。(藤原章裕)