今、産業界では円安について見方が二極に分かれている。輸出業種を中心とする大企業は円安を歓迎するが、輸入コスト上昇に悩む中小企業や地方の住民からの反発が高まっている。
黒田総裁は9月16日時点で円安について「自然な形」と述べた。筆者は円安容認に異論はないが、黒田さんは大事なポイントを外している。消費税増税の回避である。
焦点は今や、来年10月予定の消費税率再引き上げをめぐる是非論議だ。4月の8%への税率アップが、金融緩和・円安・脱デフレの道を破壊した現実を無視するようだと、金融緩和と補正予算の組み合わせで増税ショックをかわせるという、破綻したはずの増税論理に押し切られかねない。その結末は円安下でのインフレと不況、いわゆる「スタグフレーション」の局面だ。銀座でみた風景の明暗は一層どぎつくなるだろう。