【日曜経済講座】編集委員・田村秀男
今月1日以降は中国の国慶節休暇週。中国人ツアーのラッシュだと聞いて、東京・銀座に足を運んでみた。デパートの有名ブランドのバッグ売り場を覗(のぞ)くと、日焼けし、ギラギラした顔つきの中年の男たちが目に入る。「ニイハオ(こんにちは)」と話しかけると、「日本はとにかく安い」とご満悦。「女たちへのみやげに何個もまとめ買いする者もいるよ」とか。何しろ、年10%前後の高利回り信託商品も持つ中国の中間層や富裕層のフトコロは豊かだし、人民元は円に対して昨年初め以来約25%高くなった。
円安が中国など外国人観光客の数を増やし、高級デパートの売り上げ増に貢献しているには違いない。が、われわれにはおよそ別の世界の生業のようだ。日本人ときたら、預金金利はゼロ、増える税負担と物価上昇のために使えるおカネは減っている。
いったい何が起きているのか、まず結論を言おう。
今年4月の消費税増税を機にアベノミクスの主柱である「異次元金融緩和」の効能が失(う)せたのだ。ほぼ1年前、金融緩和で増税による副作用を打ち消せるとみて、安倍晋三首相に増税実施を決断させた黒田東彦(はるひこ)日銀総裁はオウンゴールを演じたと、筆者は断じる。