ここでグラフを見よう。円の対ドル相場を含め、アベノミクスが始まった平成24年12月時点を100に置き換えて経済指標を月ごとに追った。上記のシナリオ通り、円安軌道が生まれ、輸入物価上昇に引き上げられるようにして消費者物価もすこしずつ上がり始めた。鉱工業生産も上向いた。ところが家計の消費水準の回復の足取りは重い。日本のデフレ病とは、物価が下がり続けるばかりではない。物価下落以上の度合で賃金が下がる、つまり、実質所得が下がる。収入が目減りするのだから、家計の消費は増えようがない。
そこに追い打ちをかけたのが4月からの消費税増税である。消費者物価上昇率は昨年9月から1%台に乗ったが、今年4月以降は一挙に3%台半ばにジャンプした。春闘によるベアも物価上昇に追いつかず、実質賃金は押し下げられた。家計消費は4~6月に戦後最大級の落ち込みをみせた後、7、8月も低水準が続く。企業のほうは在庫の急増にあわてて、減産に転じている。消費税増税前の駆け込み需要後の急減から7月にはV字形に反転するという楽観論は、実質的な家計収入の減少という日本病を甘くみた。