政府は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で進んだ円安で、いずれ輸出が高い水準まで回復するとみていた。読み違えは安倍政権発足前までの円高で、想定以上に企業の海外生産移転が進んだことだ。国内生産の縮小で輸出が増えにくくなった結果、国内自動車8社の昨年の輸出台数は前年比2・8%減と、円安でも減少に歯止めがかからなくなった。電機分野でもスマートフォン(高機能携帯電話)の輸入などが増え、輸出は増えにくい構造だ。
低調な輸出は、設備投資の伸び悩みも招きかねない。10~12月期の設備投資は1・3%増となったが、市場予測(2%増)を下回った。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「消費税増税後の景気は、良くも悪くも輸出がカギを握る」と指摘する。
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≪物価≫
■デフレ脱却 鮮明に
アベノミクスによる円安は、副作用として輸入物価の上昇を招いている。その結果、デフレ経済の特徴である、名目成長率が実質成長率を下回る「名実逆転」状態が、25年10~12月期は2四半期ぶりに解消された。物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターも4四半期ぶりのプラスだった。
物価は消費税増税でさらに上昇する。日銀の試算によれば4月の消費税増税で物価は2%程度押し上げられる。増税に伴う購入価格の上昇で消費に大きな影響が出るのは確実。財務省によれば、所得から税金や社会保険料を国民がどのくらい払っているかを示す26年度の国民負担率は25年度比1・0ポイント増の41・6%と過去最高になる見通し。
企業の賃上げなどで家計の所得が増えなければ節約意識が強まり、店頭での価格競争が再び激化して「再びデフレ圧力が強まる可能性がある」とニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは警戒する。増税後の景気腰折れをいかに防ぐか。日本経済がまもなく試練の時を迎える。