「鏡師」。神社などにある鏡を作る職人のことを、こういう。キリスト教禁制の時代、いわゆる隠れキリシタンの人々は、一見、普通の銅鏡に光を当て、その反射光に浮かび上がるキリストやマリアを拝んで信仰を続けた。鏡師が手掛ける鏡は、その特殊性から「魔鏡」とも呼ばれる。「RE-DESIGNニッポン」第22回は、現在、「魔鏡」を製作する日本唯一の鏡師、山本合金製作所の5代目、山本晃久さんの取り組みを紹介する。
極限の磨き作業
日本の鏡の歴史は古く、弥生時代にまで遡(さかのぼ)る。魏(現在の中国)から伝わった鏡の写しに始まるといわれ、青銅の「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」などが有名だ。今でも寺社に祭られている青銅鏡を手作りで作り続けているのが、「山本合金製作所」である。鋳造から模様作り、仕上げなど、ほとんどの工程を手掛ける。
鏡の大まかな製造工程は、(1)砂で模様入りの鋳型を作る(2)鋳型に合金を流し込む(3)冷えたら砂型を壊し、研ぎをかける。研ぎに使う道具の一つを「セン」と呼ぶ。なぜ「セン」か。「磨いているときの音が『セン、セン』なので、『セン』と呼ばれているのかもしれませんね」と、山本さんが笑いながら教えてくれた。