古来より日本人の食のシーンに欠かせない木の器。ろくろを用いて木をくり抜き、器を生み出す製法が「ろくろ細工」である。特に木曽地方では、良質な天然木が豊富にあったことから、この製法が「南木曽ろくろ細工」として定着、発展してきた。その伝統を受け継ぐのが、カネキン小椋製盆所である。「RE-DESIGNニッポン」の第16回は、「南木曽ろくろ細工」の新たな可能性に向けた取り組みを紹介する。
「木地師(きじし)」-。これが、ろくろを使い、椀(わん)や盆などの木工品を加工・製造する職人の呼称だ。その歴史は、9世紀にまでさかのぼる。文徳(もんとく)天皇の第一皇子、惟喬(これたか)親王が近江に隠棲(いんせい)した際、従者の小椋実秀、大蔵惟仲にろくろ技術を伝授したことに始まるとされる。
その子孫は、朝廷や幕府から全国各地の樹木を伐採する免許を付与され、木地師の統領となった。木工品に適した天然木を求めて全国の山中を20~30年単位で渡り歩いた木地師の一部が、豊かな材料に恵まれ、街道の「妻籠宿(つまごじゅく)」という需要地が近い南木曽に定住。これが「南木曽ろくろ細工」発展の基盤となった。