ろうそくの明かりは古来より、日本人の夜を照らし続けてきた。自然の恵みがもたらす原料で一つ一つ作られてきたのが「和ろうそく」だ。その伝統を受け継ぐのが「近江手造り和ろうそく大與(だいよ)」である。「RE-DESIGNニッポン」の第17回は、この「和ろうそく」の新たな可能性への取り組みを紹介する。
材料100%にこだわり
「美しいから」。大與の四代目、大西巧(さとし)さんに、手造り和ろうそくの原料や作り方、こだわりなどを問いかけると、返ってくるのが、この言葉だ。
「美しい」には、いろいろな思いがこもっている。見た目の美しさはもちろんである。イグサと和紙からできた灯芯から、スッと高く立ち上る力強い灯火は、均整な三角形を描き、凛とした雰囲気を感じさせる。揺らぐ灯火に照らしだされた光景は、陰影を作り出し、幽玄の世界を感じさせる。
「櫨(はぜ)100%のろうそくは、灯火の色や形状の安定感も素晴らしい。しっかりと燃焼するので油煙もほとんど出ず、ろうも垂れない」と、灯火の美しさの要因を話す。
美しさを追求するからこそ、材料も安全・安心な植物性の材料100%にこだわる。その根底には、日本人が培ってきた物づくりに対する意識と、これを生み出す研ぎ澄まされた感性があるのだろう。