京都には平安時代から長きにわたり、さまざまな文化が育まれ、建物、着物、食器など多くのものが美しく彩られてきた。その色彩を生み出すために欠かせないものが「顔料」である。日本画の絵の具として知られる顔料であるが、日本画のみならず、いろいろな工芸に用いられてきた。しかし、明治時代になって西洋化が進み、顔料の需要は激減した。そのなかで、色彩という基本的な価値を現代の生活で使えるように化粧品に応用しているのが京都の上羽絵惣(うえばえそう)である。「RE-DESIGN ニッポン」の第14回は、この取り組みについて紹介したい。
受け継ぐべき「軸」
京都の工芸において、色彩を与える顔料は多彩な役割を担ってきた。絵画はもちろん、襖絵、工芸品の着色、着物の図案など、京都の彩りを生み出すために顔料は欠かせないものであった。顔料には、山から採掘した泥や土を水で精製し、不純物を取り去ったあと、板状に干し上げた「水干絵の具」、岩石を砕いた「岩絵の具」、貝殻を砕いて白色を出す「胡粉(ごふん)」の3種類がある。