木製の看板に格子戸、丸形ポストに駄菓子屋-。時折、狭い商店街を縫うように現在は見られなくなったボンネットバスがやってくる。まるで昭和の頃にタイムスリップしたような街並みが広がっていた。
大分県の国東(くにさき)半島にある豊後高田市の「昭和の町」を訪れた。昭和30(1955)年ごろには“商人の町”として活気があった豊後高田市。しかし、昭和40年代に入ると鉄道路線の廃止などで徐々に衰退していき、平成に入ると「犬と猫しか歩かない悲劇の商店街」と揶揄(やゆ)されるほど寂れていった。
そんななか、危機感を抱いた市や商工会議所が仕掛けたのが、にぎわいがあった昭和30年代の町並みを再現し、商店街を不死鳥のごとくよみがえらせようとする「昭和の町」の取り組みだ。
新たな町づくりは、2001年からスタート。現在は、商店街の約40店で、店舗を昭和時代風にリニューアルしたり、「一店一宝」をテーマに店先に往年の配達用の自転車や足踏みミシンなど店に残る“昭和のお宝”を展示したりしている。合わせて、拠点施設として「昭和ロマン蔵」を整備。敷地内には、オート三輪やレトロカーなど懐かしい乗り物が並び、人気を集めたキャラクターの人形も飾られている。