僕はどうしても甘えてしまう受け身な性格で社会経験も少ないので、厳しい環境に置いて、自ら一人で躊躇(ちゅうちょ)せず積極的に動けるような行動力や判断力を身につけたい。スケートを目的とした考え方はせず、スケートに対する気持ちも根本から見直そうと思っている。
実は、現役生活の最後の2年ほどは、自分が本当にスケートが好きなのか疑問に思うことがあった。僕自身は「スケートそのものが好き」というよりも、期待されて応えることに喜びを感じて競技をしていた部分が大きかったのだと思う。そのせいか、その期待や時代の変化を気にしすぎて自分に自信を持てなくなって、モチベーションが上がらなくなった。それが引退を加速させた部分もあったと思う。ソチ五輪後は心が疲れきってしまい、スケートに対して気持ちが戻ってこなかった。失った自信を取り戻すためにも一度スケートから離れるほうがいいと思った。
空っぽにして次へ
そんな自分の正直な思いを、今回は自著『2000days』に全て置いていくことにした。読者やファンの方にとっては辛辣(しんらつ)な内容もあるかもしれないけれど、本という形で全ての本音を吐き出すことによって僕自身は空っぽにできて、ようやく次に進める気がする。発売後は、それまではなかなか言えなかった自分の正直な思いを公言できるようになったことで、僕は今、とても心がスッキリして軽くなっている。