石井さんは「年末にかけては魚の値が上がる時期。なのに指をくわえて見ているだけだ」と唇をかむ。
達良丸のレーダーが捉えた6隻の中国漁船のうち5隻は巡視船から離れようと一列になって領海の外へ向かっていく。中には、船首に日の丸を付けた船もいた。1隻だけはその場を離れない。「網の巻き上げが間に合わなかったんだ」と金澤さん。
巡視船は中国語で警告を発するが、甲板にいた雨具姿の中国人船員数人は網を巻き上げる手を止めようとしない。白い歯を見せ、笑みを浮かべながら作業を続ける船員も。巡視船は警告を発するだけで手出しはしない。
約5分後、網を巻き上げた中国漁船は悠々と去っていった。「いったい巡視船は誰を守っているんだろうか」。金澤さんはため息をついた。(森本充/SANKEI EXPRESS)