東京都の小笠原、伊豆両諸島沖に10月末、サンゴを密漁する中国漁船が200隻以上押し寄せた。海上保安庁が懸命に捜査と警備にあたるが、「宝石サンゴ」と呼ばれる高価な赤サンゴを狙う中国漁船とのイタチごっこが続く。
荒波の中「きっといる」
小雨がぱらつく今月9日午前8時、小笠原諸島の父島・二見漁港を漁船「達良丸(たつりょうまる)」で出港し、サンゴ密漁の現場に向かった。9.7トンの達良丸は荒波にもまれ、甲板には波しぶきが降り注ぎ、投げ出されそうになる。「こんな日にわざわざ漁に出ようとは思わないね。でも、やつら(中国漁船)はきっといるよ」。船長の金澤多可志さん(39)は言い切る。
仲間の漁船から無線で情報が入った。「父島と母島の間にいたってよ」。金澤さんは針路を南に切った。「やはり、いたね」。父島から16キロの領海内にレーダーが船影を捉えた。「縄場(なわば)」と呼ばれる好漁場だ。
肉眼で確認できるまで近づくと、海保の巡視船「するが」の前で網を回収して逃げようとする中国漁船がいた。「あれが今の小笠原の現実。内地の人にも分かってほしい」。金澤さんは中国漁船をにらみつけた。