秋をイメージした八寸も彩り豊か。2度目の登場となるマツタケはツルムラサキの葉のお浸しとの組み合わせ。鮮やかなピンク色のサーモンは、柿の実に見立てた丸いすしに変身。さらに栗の渋皮煮や銀杏、シメジなども盛りつけられ、大皿の上は“秋全開”だが、よく見るとシメジの根元には煎ったカラスミがあしらわれ「今、掘り起こしてきたばかりで、まだ土がついている様子をカラスミで表現した」(三島竜二料理長)という芸の細かさに脱帽させられる。
「ガラスの器」実は…
向附(むこうづけ)の器は一見ガラス製のようだが、実は桂むきにしたダイコン。周辺にはモミジの葉の形に切り取られたニンジンが散り、秋の庭を連想させる。容器の中には脂の乗った戻りカツオのたたきが盛りつけられ、ショウガじょうゆで味わうと絶妙だ。
焚物(たきもの)は海老芋が木の葉の形に、黄色いサツマイモはイチョウの葉の形に切りそろえられ、白味噌で溶いたかつおとじゃこだしに浮かぶ。添えられたカラシがピリリと味を引き締める。三島料理長は「粘り気のある大阪・富田林産の海老芋を好んで使う」そうだ。