冬季五輪に日本フィギュアで初の3大会連続出場を果たし、バンクーバーでは日本男子として初めて表彰台に上がった。「国旗が揚がっていくところは、今も鮮明に覚えている」と会見で振り返った。世界選手権優勝も、グランプリ(GP)ファイナル制覇も日本男子初の快挙。群を抜く表現力で観客だけでなく、ジャッジまでも魅了。ソチ五輪で羽生結弦(はにゅう・ゆづる)が金に輝き黄金期を迎えた日本男子を背中で引っ張り続けた。
一方で競技人生は、けがとの闘いだった。バンクーバー前の08年に前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った右脚が完全に回復することはなかった。ソチ五輪前の昨年11月に痛みが再発し、たまった水を何度も抜くような状態だった。それでも6位に終わったことについて、「けがは理由じゃない。気持ちの問題」と、本紙連載のコラム「冷静と情熱のあいだ」につづった。進退については「このままで終わりたくないという気持ちも残っている。かといって現役続行とも簡単には言えない。続行するには全てを一新する覚悟が必要」と吐露していた。支えだった気持ちが切れたことが引退決断につながった。
今後について会見で「スケートから少し引いたところで、今後のことを考えたい」と話した。関係者によると、ダンスや語学に興味を示し、海外留学も検討しているという。欲しいものを聞かれ、「夢」と答えた。