国東半島の印象について猪子代表は「花の多さに驚いた」としたうえで、「人と自然との境界線があいまいで、人が手をかけ続けることで生態系が存在する、数少ない里山の一つ」と指摘した。「人と自然の距離感がとにかく気持ちよかった」とも。
会場となった豊後高田市では2006年から耕作放棄地対策の一環として「花いっぱい運動」が始まり、菜の花、コスモス、ヒマワリなどが住民の手で植えられてきた。そして、花粉が飛ぶことで、人の手が入らない山にも花々が自生し、題名のように「コントロールできないけれども、共に生きてきた」わけだ。
内覧会では永松博文(ひろふみ)市長が「とてもうれしい」と声を上げ、猪子代表と寄り添ってプロジェクターが投影する映像に入り込んで喜びを表現した。国東に住む人々の日常である「花いっぱい」が具現化した空間に、感極まったようだ。
「秘境」の歴史・文化と出合う
奥へ、奥へ。芸術祭では、山奥へつながる岩壁、花畑の中などに作品が置かれている。総合ディレクターを務める山出淳也氏は「アーティストが国東半島の歴史や文化と出合い、真正面から向き合うことで、ここでしか体験できない作品を生み出す」「訪れた人には自然を体感する装置になる」などと狙いを説明する。