「当初は自分の年金を管理・運用できると言っておき、それを取り上げることで政権は国民をだました。積み立て年金は投資に向かう長期的資金として有効であり、(凍結継続の)決定は経済にとっても有害だ」。この問題に関する発言で解任されたセルゲイ・ベリャコフ前経済発展次官(41)は露メディアにこう語り、「国家と国民の信頼関係の基礎が壊される」と警鐘を鳴らしている。
ロシアは4599億ドル(約50兆円)と世界屈指の外貨準備を有しており、当面は中央銀行にも企業や銀行の資金需要に応じる十分な能力がある。だが、公務員の給与増額や軍需産業支援といったプーチン氏のバラマキ公約に米欧の制裁が重なり、財政への打撃はじわじわと出始めている。年金資金の流用は、その一つの事例にすぎない。(モスクワ支局 遠藤良介(えんどう・りょうすけ)/SANKEI EXPRESS)