【国際情勢分析】
経済制裁というものが政治的手段として持つ効果については、専門家の間でも意見が割れるところだ。米国が1962年に発動したキューバの経済封鎖はカストロ体制の崩壊をもたらさなかったし、国連安保理決議に基づく北朝鮮への制裁もいまだ核開発を放棄させるに至っていない。やはり核疑惑を抱えるイランは孤立脱却に動き始めたとはいえ、核問題の帰結はなお不明だ。
「制裁は体制の弱体化を通じ、結果的に独裁者を倒す」と主張する専門家がいる一方、「過去の制裁の65%は成功していない」といった分析もある。ウクライナ危機で米欧から制裁を発動されているロシアでも、ウラジーミル・プーチン大統領(61)が対外姿勢を大きく軟化させることはなく、むしろ国内多数派は「反米欧」で結束している感が強い。
企業救済に資金投入
ただ、ここにきて国の根本的な仕組みの一つである「年金」に、制裁の影響がじわりと押し寄せている。プーチン政権が、制裁対象となった大企業について、年金制度の補助を目的とした「国民福祉基金」からの資金拠出で救援する方針を示しているのだ。