アニメの中に出てくる日記は人物と絡むため、通常は作画チームが担当するが、この小道具は作品の中で重要な意味を持つ。そこで、種田さんは作品のイメージに合うよう自らデザインを手がけ、実際にカバーを印刷して本に巻き、それを米林監督に見せたという。その手作りの日記帳をもとにアニメは描かれた。
その後展覧会用に日記を製本所で何十冊も印刷し、それにエイジング(汚すなどし、古いものに見せる美術手法)を施した。その中で一番イメージに近いものに、アニメの中の日記に文字を書き入れた人に同じ内容を書き込んでもらい、さらにエイジングを加えた。
一枚一枚の絵画が集積して創り上げられるジブリの世界。細部へのこだわりを追求する種田さんの手法が注入され、作品に「ファンタジー」が宿る。そして、いつの間にか人は彼の織りなす「魔法の輪」に取り込まれてしまうのだ。(写真・文:フォトグラファー 中尾由里子/SANKEI EXPRESS