漆黒の森の奧から白い和傘を手にした白装束の一団がしずしずとステージ上に現れた。顔にはキツネ面。次の瞬間、和傘が幾何学模様を描くようにかなりのスピードで動き始め、傘を支える手と身体がしなやかに舞った。妖しい音楽に、抑制を効かせた太鼓がかぶさる。ついさっきまで太鼓の音に合わせて激しく身体を揺らしていた聴衆も目の前に突如広がった幻想的な光景に目を奪われていた。
古い日本映画を思わせる舞台設定で独自の世界を披露したのは、ダンス界で異彩を放つダンスカンパニー「DAZZLE(ダズル)」。先月(8月)24日、新潟県佐渡市を拠点に活動する芸能集団「鼓童」の野外イベント「アース・セレブレーション」にゲスト出演。妖しい美しさで観客を魅了した。
ダンサーでDAZZLEを主宰する長谷川達也さん(37)は、「僕たちの舞台にはダークな世界観がある。それが野外で生の太鼓の勢いを感じながら踊ると、作品の持つ幻想的な雰囲気に力強さが加わった」と話す。ダンサーで脚本を手掛ける飯塚浩一郎さん(36)も「大地の力を感じさせる太鼓の音によって自分の中の“野生・本能的な部分”が刺激された」と手応えを強調した。