「ラーメン作りに例えたら麺を粉から練ることでしょうか」。映画美術監督の種田陽平さんは、スタジオジブリにおける仕事の作法をこう表現する。
世界の名だたる監督から信頼される種田さんが、ジブリとタッグを組んで、美術監督として全カットの背景美術を手がけた初のアニメーション映画が、公開中の「思い出のマーニー」だ。
この作品は長編映画からの引退を宣言した宮崎駿(はやお)監督(73)や高畑勲(たかはた・いさお)監督(78)が携わらないジブリ初の長編映画として注目を集める中、種田さんはジブリの生え抜きといえる米林宏昌(よねばやし・ひろまさ)監督(41)とともにジブリの心臓部であるスタジオで2年の歳月を費やして創り上げた。
コンピューターグラフィックス(CG)を使わずに手描きにこだわるということは、デジタルであれば一瞬にして完了する作業も、一筋縄ではいかなくなる。「電子レンジで簡単にチンして食べるのではなく、材料の選択からこだわって、すべて手作りで最後まで持っていく」。一見「反時代的」であるが、「だからこそ独特の絵画的な空間性や雰囲気が生まれる」という。