しかも、越比など対中強硬派は無論、越比同様領有権紛争を抱えても中国批判を控えるマレーシア、中国と加盟国のパイプ役インドネシアまで、ベトナムの対中非難を理解した。
縷縷論じてきたが、賢者を自任する中華帝国としては「間」が抜けている。《自滅する中国/なぜ世界帝国になれないのか=芙蓉書房》の著者エドワード・ルトワック(71)は、一方的勝利継続は相手の反動を呼び、結局は自らを滅ぼす逆説的論理《勝利による敗北》を指摘する。即ち-
《国際常識を逸脱した台頭・侵出は畢竟、各国の警戒感や敵愾心を煽る。中立的国家はじめ、友好国の離反まで誘発。敵対国同士の呉越同舟さえ促す。斯くして各国は連携・協力し、場合により同盟まで結ぶ。情勢は中国に次第に不利になり、その大戦略・野望は挫かれる》
翻ってみれば、日本はベトナムに経済支援→ベトナムはロシアから潜水艦購入→同型潜水艦を運用するインド海軍が越海軍乗員を訓練する-意図せぬ構図を生んだ。米比軍事協力は復元し、米印関係も牛歩ながら前進している。今次日豪関係深化も含め全て中国の“お陰”だ。
中国の「傲慢ボケ」が創り出す「間の悪さ」=戦略的錯誤→中国の孤立という悪循環、否、好循環が地球を救う。(政治部専門委員 野口裕之)