全女性に聴いてほしい
歌詞の着眼点が興味深い。曲のタイトルにもなっている「マトリョーシカ」や「フラフープ」といったモノが、メタファーとしてうまく使われている。学生時代に英国の小説家、ジュリアン・バーンズを研究し、その後、トニ・モリスンなど黒人女性文学を学んだ影響が大きいという。
「このアルバムで今の私と一番リンクしている曲は『革命』です。ソロになった決意の裏のいろいろな思いは、全部この歌にぶち込んだので。そして女性みんなに聴いてほしいですね。大きなことを決めて実行するときには、その意思を突き通す自分に対する尊敬もあるし、反対に恐ろしさもある。子育てしかり、部活動しかり、就職して新しい環境に身を置く人しかり、独りぼっちで闘っている気になるときってあるじゃないですか。その時に『革命』を聴いてもらうことで、後押しできないかなって思っているんです」
社会で働いた経験もあるからこそ、説得力のある歌を歌えるのだろう。「標本箱」にはある意味、脚本家としての黒木渚の才能も発揮されている。そう思うと、大学入学時に悩んだ演劇部と軽音楽部に関するセンスが、このアルバムに見事に集結しているのだ。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)