エアブラシから吹き付けられるインクが、私の体に次々と文字を浮かびあがらせる。メークルームに設置されたベッドに横たわり、少しずつ肌が歌詞で覆われていくのを見ていた。今日の撮影でのメーン衣装はこれだ。
鋤田(すきた)正義さんとのフォトセッションは、小さなキッカケが巡り巡って訪れた思いがけない幸運だった。
デビッド・ボウイ、忌野清志郎(いまわの・きよしろう)、布袋寅泰(ほてい・ともやす)など数多くの有名ロックミュージシャンの撮影で知られる世界的カメラマンの鋤田さん。ロック好きの人間ならばなおさら彼の作品に触れる機会は多いはずだ。
かたや、今回のフォトセッションで被写体を務める私、黒木渚は昨年12月にデビューしたばかりの新人ミュージシャン。作詞作曲も行っている私の作品は、鋤田さんいわく「大胆」なのだそう。
そんな私が突然手にしたフォトセッションの機会。作品を作り出す立場だった私が、今回は鋤田さんの作品に作り出されるというのは、初めて味わう不思議な感覚だ。巨匠と呼ばれるカメラマンの前で、被写体として何を表現するのか。