2013年11月30日、この日は黒木渚全国ワンマンツアーの最終日だった。場所は東京都台東区の東京キネマ倶楽部。グランドキャバレーを改装して作られたライブハウスであり、ステージから壁紙、装飾までオペラハウスを思わせるようなクラシカルな雰囲気だ。
「ショーを作る」
ツアーファイナルは集大成でなくてはならない。キネマ倶楽部の下見に来た時から、ここでクライマックスを迎える姿を思い描きながら準備してきた。
キネマ倶楽部は、劇場自体が独特の世界観を持っている。えんじ色の上品なステージ幕、別ステージから本ステージへ伸びる美しい螺旋(らせん)階段を見ながら思った。「曲の発表会ではダメ、ショーを作らなければ」
当日の朝、会場入りするとそこには既にカメラを構えた鋤田さんの姿があった。本番の時間に合わせて撮影にいらっしゃるとばかり思っていたが、まさかのスタッフと同時に会場入りである。開演まであと8時間もある。