また有力政治評論家のチャールズ・クラウトハマー氏は、ベトナム戦争後の厭戦(えんせん)気分のなかで消極外交をとったカーター政権が1979年の旧ソ連のアフガン侵攻後、軍事費拡大などの積極外交に転じたことを評価。ロシアのウクライナへの介入で「オバマ氏は目を覚ますのか」と問いかけ、NATOとしての軍事的な対応でロシアの動きを抑止するよう訴える。
しかしオバマ氏の消極外交は米国の現実に基づいた対応という側面もある。ブッシュ前政権が2003年に開戦に踏み切ったイラク戦争では、開戦理由だったフセイン政権の大量破壊兵器保有が確認されず、「大義なき戦争だった」との見解が浸透し、米国民に厭戦気分を広げた。また巨額の戦費は金融危機対応とあいまって財政を圧迫し、現在の米国には軍事介入や治安維持活動の余力はない。
引き出せるか露の妥協
このためオバマ氏は「米国が継続的にできることは国際社会を結集させることだ」として、経済制裁強化に事態打開の期待をつなぐ。ハーグで開かれた先進7カ国(G7)首脳会合では、ロシアが事態を悪化させれば、一致してロシアの基幹産業を標的にした強力な経済制裁を行うことで合意。ロシアからの対抗措置で先進国経済が打撃を受けることを承知のうえで、ロシアに代償を支払わせる意志を示した。