つまり、基地移設問題も関心が高いのは本島や名護市だけであり、東京電力福島第1原発事故への関心が福島以外では薄くなりつつある現実が重なる。「共有知」の欠如の表われといえる。
東北の貧しい農村(現・岩手県花巻市)で生まれた宮沢賢治(1896~1933年)は、30歳のとき、「世界ぜんたいが幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(『農民芸術概論綱要』序論)と書いた。
国家間の貧富の格差が大きいうちは、テロや紛争、戦争がなくならないことの裏返しでもある。メディアは根底のところで、こうした視点での報道が求められており、「共有知」に貢献することこそがメディアの大切な使命の一つであると考える。(同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS)