新たな引き出し増えた
刊行は今年11月。読者からの反響に、物語の力を再認識させられているという。「知り合いに80歳ぐらいの女性がいます。その方は認知症を患われているのですが、ある日自宅の留守番電話に彼女からのメッセージが残されていました。『面白かったよ。もっと書いてね』って。それを聞いているうちに涙が出てきて…。小さい頃から読んでいる物語なので、今でも自然に読むことができるのだと思う。物語の中で、ひととき遊んでくださっているのです。物語の力に気づかされました。だてに長く語り継がれてないな、って」
一つずつ、昔話を自分なりの物語へと生まれ変わらせていく。それは、自分自身の楽しみでもあるという。「震災後、自分自身も体調を崩しましたが、昔話を書きながら、どこかほっとしている自分がいました。私も、物語の力、言葉の力に励まされた一人です」