2013.12.16 14:30
【本の話をしよう】
≪被災者につらい現実忘れてほしい≫
鋭い心理描写で支持を得る直木賞作家、乃南(のなみ)アサさん(53)の新刊『新釈 にっぽん昔話』。タイトル通り、乃南流の解釈で誰もが一度は読んだあの昔話をよみがえらせた。かつて子供だった大人から、現役(?)の子供まで。読む者の胸をわくわくと躍らせてくれる。
本書に収められているのは、6つの“昔話”。「さるとかに」(さるかに合戦)、「花咲かじじい」「一寸法師」「三枚のお札」「笠地蔵」「犬と猫とうろこ玉」…。ラインアップを見るだけで、懐かしさがこみ上げてくる。
周りの人を想像しつつ
ミステリー『凍える牙』などで知られる乃南さんと、昔話。一見意外な組み合わせだが、きっかけは東日本大震災だった。震災発生当日、仕事で偶然仙台市に滞在中だった。翌日、運良く東京まで帰り着くことができたが、心の中にはある種の「後ろめたさ」が膨らんでいったという。