『古事記』というと、少々難解なイメージがあるかもしれませんが、実際に読んでみると、そこに描かれているテーマは、「一目惚(ぼ)れの恋」や「夫の浮気」「妻の嫉妬」、さらに「いじめ」や「兄弟の仲違い」など、驚くほど現代人に身近なものばかりです。神々も我々(われわれ)人間と同じように失敗を繰り返しながら、そのつど立ち直っていることを教えてくれるのです。
『よみ語り』で努めてきたのは、『古事記』のダイジェストや解説的な語りではなく、いかに今の時代にシンクロする魅力的な物語として甦(よみがえ)らせて、皆様の前にお出しするかということでした。
この『国民の神話』も、単なる『古事記』の解説書や案内ガイドではなく、『古事記』を何倍も楽しく味わうための味付けや盛り付けがふんだんに凝らされていて、まさに“オイシイ一冊”です。『よみ語り』とともに、くれぐれもお見逃しなく。(産経新聞出版・本体1300円+税)
評・浅野温子(女優)